ビル間に残された倉庫をオフィスにする

101BASE

ビルに挟まれ接道していない元倉庫をオフィスに改造する。外壁の1面を解体し光と風を取り込む。オフィスの象徴でもあるカーテンウォール(ガラス張り)を裏路地に設けることで、秘密基地のようなオフィスを目指した。

日本橋の大通りから細い路地に入り、さらに隣接する建物の隙間を通った先、人目に触れず敷地は存在する。クライアントである広告代理店が所有する木造倉庫を、営業部・企画部のオフィスに転用する計画である。接道がなく、四方の隣地建物によって塞がれる特殊な条件下において、敷地がもつ閉塞感の払拭を目指した。まずは、十分な採光を確保するため、構造上最低限必要な両端の袖壁を残し、ファサードの外壁を三層に亘り広範囲に解体した。そこに、オフィスビルの象徴である「カーテンウォール」を模したファサードを計画し、元倉庫をオフィスビルに擬態化させた。「カーテンウォール」の施工にあたり、敷地は搬入経路が狭く重機が入らないため、手運びによる搬入・人力による吊り込みが可能なサッシの割付とした。また、既存建物に過剰な重量負荷を防ぐ目的で、木軸と製作スチールサッシを構成部材とし軽量化を図った。外壁の撤去により、ガラス面を通し三層全てに天空光が届く。最上階の天井には反射透過する素材を使用し、大きな窓辺が水平面に映り込み、内部に光を引き込んだ。結果として、隣地外壁までが内部空間のような錯覚を起こし、既存のボリュームを超えた空間の拡張につながった。設計当時、折しも初の緊急事態宣言が発令された。出社率を2割まで抑制し、働く場が根本から見直される事態に直面する中、働き方の転換期におけるオフィス像を模索した。元倉庫への移転に伴い、空き物件となる別棟のオフィスビルを売却し、オフィスの縮小化を図った。次第にリモート業務が主流となり、出社日は対面で情報交換ができる貴重な機会となった。そこで、人々が集う場の中心に大きなテーブルを計画し、三層それぞれのテーブル形状によって、異なる性格を空間に与えた。接道のない四方を囲まれた不利な敷地も、周囲の視線や騒音から解放され落ち着いたオフィス環境となる。敷地条件と用途との異例なマッチングにより、場の価値が好転すると、人は自然と用途の枠組みを超えた活用を試み始める。働き方の固定観念が、働く場によって拡大されることを期待している。

施設名|101BASE
所在地|東京都台東区
用途|オフィス
竣工|2021年
種別|改修
構造|木造
敷地面積|65.02m2
建築面積|49.27m2
延床面積|133.83m2

アートディレクション|Study and Design
施工|月造
構造設計|テクトニカ
サイン|Study and Design
写真撮影|メグミ
動画撮影|toha
意匠設計|junpei nousaku architects
能作淳平 朱牟田育実

掲載
新建築 2021年10月号
AXIS 2022年4月号