ニュータウンでコミュニティーを考える

ハウス・イン・ニュータウン

ニュータウンはその名の通り新しくつくられた街である。それゆえ、そこに入居してくる住人たちの多くは新しく家庭を持ち、子育てをしている世代である。しかし家の中には家族以外のメンバーが集まれる場所があまりない。そこで、この計画では、家が街とつながり、人びとが集まれる場所をつくることを目指した。

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ニュータウンはその名の通り新しくつくられた街である。それゆえ、そこに入居してくる住人たちの多くは新しく家庭を持ち、子育てをしている世代である。ほぼ同じ世代の人たちが同じ子育てという目的で集まっているため、共同体の意識も生まれやすい。この住宅に住む夫婦も同様に、子育てのために地域のコミュニティを期待し、この街に住むことにした。しかしその一方で、ここに建っている住宅の多くは核家族が住むことを想定しているため、家の中には家族以外のメンバーが集まれる場所があまりない。また、この街は造成地のため、敷地が基壇状になっており、その段差によって家は街から遠ざかってしまっている。そこで、この計画では、家が街とつながり、人びとが集まれる場所をつくることを目指した。まず、家と街の距離を近づけるために、敷地につくられた基壇の上に建物を乗せるのではなく、基壇を建物の構造の一部にし、造成された土を約1m掘り出すことで、1階の床と道路の高さをほぼ同じにした。そこに3階建ての高さの大きな鉄骨のフレームを架け、吹き抜けたホールとした。そして道路側の擁壁にアルミサッシをのせ、屋根までひとつづきの大きな窓にした。季節の良い時はジャロジーのように開け放すことで、ホールは外と連続した場所になる。このように家の一部を街に開放することで、近所の人がお茶をしに立ち寄ったり、子供たちがお遊戯室のように遊べるような小さな集会場になることを目指した。小さな部屋だけで構成された間取りだと、そこに住む家族だけが空間を占有し、窮屈で閉鎖的になってしまうが、空間や開口をスケールアウトさせることで、人を招き、自由に使ってよいような寛容な状態になる。そして同世代が集まるこの街では、家族たちは同じく歳を重ねていく。20、30年も経てば、この街で育った子供たちも独立し、親たちはそろそろ高齢者になる頃だ。その頃にこそ家が街と繋がり、人を招き入れるような仕組みが必要になると思う。自分ひとりではできないことは他の人の力を借り、もし相手ができないことがあれば手助けをするという相互扶助的なネットワークが大切になる。今日の家づくりおける急務は、とにかく家族を街から孤立させないことなのではないだろうか。
所在地|神奈川県藤沢市
用途|専用住宅
竣工|2014年
種別|新築、鉄骨造
敷地面積|124.17m2
建築面積|61.88m2
延床面積|98.23m2
施工|工藤工務店
構造設計|オーノJAPAN
設備設計協力|科学応用冷暖研究所
設計協力|アーキシステム研究所
撮影|junpei nousaku architects
意匠担当|能作淳平
掲載|
新建築住宅特集 2014年12月号
Pen 2015年4/1月号
TOTO通信 2018年 第62巻2号