あるモノを編集してつくる

神泉のリノベーション

東日本大震災の直後に着工したこのプロジェクトは一時的に建築資材の入手が困難になってしまった。そこで、この部屋にある既存の材料をもう一度再利用することで建設可能にしようと考えた。工夫次第でなるべくゴミを出さず一室で完結したリノベーションの試みである。

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「神泉のリノベーション」は計画中に東日本大震災が起こったため、一時的に建築資材の入手困難に陥った。この問題を解消するために、この部屋にある柱、梁、根太、野縁などの木材を再利用することにした。解体をして材料を確認しながら、どのように利用するかを検討していった。大きくて重量のある材料は柱や土台などの構造部分に、小さくて軽い材料は建具など軽量化が必要な部分に使用した。資材や資金が不足していても、その場にあるものをその場で組み直すことで、空間を新しく再生できればと考えた。
住宅はnLDKであらわされる間取りでその内容が分類される。マンションも同様に、立地条件や築年数にもよるが、おおきくは間取りによって賃料が決まる。部屋数が多い方が賃料は高いため、多くの物件は部屋自体の広さよりは部屋数を優先させて建てられることが多い。もちろん部屋数が多いことは良いことであるが、専有面積は限られているため、部屋数を増やせば、その分それぞれの部屋自体は小さくなってしまい、使い方も限定されてしまう。そこで、神泉と池袋の2つのリノベーションでは間仕切りを取り外し、最大限のワンルームにすることにした。空間の数ではなく、空間の大きさを大きくすることで、住む人は使い方や身振りも大きくなる。例えば、この部屋だと、たくさんの人が集まって料理をしたり、食事をしたり、音楽を聴いたりすることもできる。間取りが使い方や使う人数を限定してしまうのではなく、なるべく住む人がのびやかに使えて、さまざまな使い方を想像しながら暮らせればと思う

施設名|神泉のリノベーション
所在地|東京都渋谷区
用途|専用住宅
竣工|2011年
種別|改修
構造|RC造
専有面積|33.03m2

施工|中田製作所
施工協力|HandiHouse Project
撮影 junpei nousaku architects
意匠設計 junpei nousaku architects
能作淳平

掲載
新建築住宅特集 2012年8月号
新建築JA no.102