家族にあわせて成長する家

新宿の小さな家

小さな家であっても、できるかぎり広がりのある空間をつくりたい。地面から屋根までを一挙につながる背の高い平屋をつくることにした。生活スペースが確保するために床をかけるための梁を架けている。住み手は暮らしながら、使い方に合わせて床の量を設定することができる。家族とともに変化していく家を目指した。

都心の密集地でも開放的な住宅をつくる方法を探したい。土地の細分化が進む都心の密集地では、床面積を確保するために建物を敷地いっぱいに建て、さらに床を積層することで、垂直方向にも生活の場を求めることになる。しかし積層された床によって内部は分割され、下階は上階に比べて暗くなる。また建物は通りから十分セットバックできないために通行人の視線を気にして、壁で閉ざしがちになってしまう。多くの場合、1階は玄関、駐車スペース、水回りなどに割り当てられ、住宅は街に対して閉鎖的な印象になってしまう。都心の密集地では、もはや開放的な小住宅はつくることができないのだろうか?そこでまず、家族の居場所になる居間を1階に配置することにした。また上部には床を積層せずに地面から屋根までひとつながりの吹抜けにすることで、住宅とは思えないようなスケールの空間になった。また、住み手の生活の変化に合わせて増床できるように梁を吹抜けに架けた。さらに外壁の大部分を開口にすることで、まるで3階建て住宅の床や壁を剥ぎ取ったような空間になった。大きな開口からは、向いの植栽が見えたり、超高層のビル群が見えたり、街のさまざまな様子が見ることができる。住宅として内部で完結するというよりは、路地から超高層を眺める新宿の街のなかで暮らすような住宅だ。

所在地|東京都渋谷区
用途|専用住宅
竣工|2011年
種別|新築、木造
敷地面積|50.75m2
建築面積|29.73m2
延床面積|56.51m2
施工|工藤工務店
施工協力|中田製作所
構造設計|オーノJAPAN
撮影|junpei nousaku architects
意匠担当|能作淳平
掲載|
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